展示室3-4 ここではイギリスのウランガラスを紹介しています。
写真(4)はウランガラス収集家のあいだで人気が高い英国のバートルズ・テイト(Burtles & Tate)社の白鳥の花入れです。底にはRd No 20086という登録番号の刻印があり、1885年1月8日 にデザイン登録されたものです。全体は黄色系のウランガラスで、前部が白い半透明のオパールガ ラスになっています。頭部と羽の先端も少し白色半透明になっています。プレスガラスですが、羽の模様 など細かく、他のメーカーの白鳥と比べると気品が感じられます。白鳥のサイズには大中小の3種類があります。 写真のものは中のサイズです。それぞれのサイズの白鳥のデザインはよく似ていますが全く同じではなく、微妙に違いがあります。 また、ウラン入りのオパールガラスだけではなく、透明やピンクなど他の色ガラスでも作られています。 |
1858年、James Derbyshire は彼の兄弟のJohn 、Thomas とともに、イギリスのマンチェスターにガラス会社を設立しました(James Derbyshire & Brothers社、のちにJames Derbyshire & Sons社と改称し1881年まで製造)。1873年にはJohn Derbyshireが独立してRegent Road社を設立し、1876年までの4年間ガラス製品を製造しました。
写真(6)および(8)のライオンのペーパーウエイトは、John Derbyshireにより作られたもので、内部は中空になっています。 イギリスでは装飾品や工業製品に対して1842年に著作権法が定められ、すべての登録製品にはロゼンジ(Lozenge)と呼ばれる菱形の登録マークが刻まれるようになりました。ロゼンジマークは1842年から1883年まで使われ、1884年以降は写真(4)の白鳥に見られるような「Rd.20086」という番号表示に変わりました。デビッドソン社のガラス製品も番号表示となっています。 このライオンのペーパーウェイトは、1874年7月3日に登録されています。ライオンの左側(手前)の台の部分に、写真(10)に示すようなロゼンジマークが刻印されています。ロゼンジのマークには、ガラス製品が属するカテゴリーの''III''、1874年7月3日を意味する''4''、''U''、''I''、''3''が印字されています(''U''が1874年、''I''が7月、''3''が3日を意味し、''4''はパーセルを表すようです)。 またライオンの右側(写真(6)では後方)には、写真(11)に示すように、Regent Road 社のトレードマークである、JとDをあしらった錨のマークも有ります。このライオンはロンドンのトラファルガー広場にあるSir Edwin Landsee'sのライオン像をモデルにしたと言われており、米国のコーニングガラス美術館にも同じものが展示されているそうです。 |
写真(12)はQueen's Ivoryと呼ばれる英国サワビー(Sowerby)社のバスケットです。Sowerby社も英国の有名なガラス器メーカーのひとつで、今日よく知られているのは、ボーンチャイナのような淡黄白色のプレスガラスの製品です。Sowerby社は1807年に英国北東部のGatesheadで設立され、1972年まで数々のガラス製品を生産しました。 パールラインガラスで有名なDavidson社もGatesheadで1867年に設立されています。Gatesheadは、英国中央部バーミンガム近郊にあるStourbridgeと並んでビクトリア時代のガラス器製造の中心地でした。 このQueen's Ivoryは、1878年にJohn George Sowerbyによって英国特許が取得されました。やや黄色味を帯びた色合いを出すために、ウランを1%ほど混ぜたようです(写真ではほぼ白色に見えますが、実物はもっと黄色味を帯びた色合いです)。 |
写真(14)も、英国Sowerby社Queen's Ivoryの砂糖入れ(Sugar Bowl)です。内面下部にロゼンジ及びトレードマークの刻印が見られます。1878年11月8日にデザイン登録されたものです。ボウルの胴体にある孔雀と花の模様が特徴です。継目がよくわからないほど型押し成形品としては精巧に作られています。これもウランを含んでいるので、象牙色を呈していますが、微かに緑色がかっているように見えます。 |
(16) 白色のバスケット、イギリス、Sowerby 社、ロゼンジ(Lozenge)登録マーク有り (1878年11月4日登録)、L約9cm、 型ガラス、ウランガラスではない。 |
(17) 同左 UV。ウランガラスではないので 紫外線を当てても緑色の蛍光は出ない。 |
Sowerby社のガラス製品には、磁器のような白色系のガラス製品もありますが、これにはウランは入っていません。ウランが入っていないものは真っ白い色で、いわゆるミルクガラスと呼ばれます。写真(16)は、写真(14)と同じシリーズのバスケットですが、ウランが入っていない白色系のガラスです。紫外線を当ててもウラン特有の緑色の蛍光は出ません。
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写真(18)は英国のバートルズ・テイト社(Burtles, Tate Co.)の白鳥の花入れです。底にはRd No 20086という登録番号の刻印があり、1885年1月8日 にデザイン登録されたものです。 写真(4)の白鳥とほぼ同じものですが、こちらのほうが乳白色のオパールガ ラスの部分がより強く発色していて、より白鳥らしく見えます。また、羽のパターンは同一ですが、羽の広がり具合や尻尾の上がり具合が異なります。サイズも微妙に違います。
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写真(20)は英国製のワイングラスです。6個のセットのうちの3個を並べました。胴の部分は6面にカットされていて、下がやや細くなっているのが特徴的です。高さは13.2 cmから13.4 cmと微妙に不揃いです。また、胴部分の肉厚や脚部の2段ノップ(丸い握り)の形もそれぞれ少しずつ形状が異なっています。メーカーや製作年代は、はっきりとしませんが、脚部のベースの先端がシャープなエッジになっていており、1850-1860年ころに作られたBlown Footの特徴を有しています。また、これとよく似たデザインのワイングラスは、イギリスの Percival Vickers 社により1850-1860年代に作られたワイングラスとして、The Big Book of Vaseline Glass (Barrie Skelcher)に紹介されています。
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写真(22)は英国Henry Greener社製の小バスケットです。プレスガラスで、皿の部分の直径は約12 cm あります。このガラスにはロゼンジの刻印はありませんが、The Big Book of Vaseline Glass (Barrie Skelcher著)に、これと同じバスケットが紹介されていて、 Greenerにより1870年にデザイン登録されたものという記述があります。Henry Greenerは、James Angusとともに、イギリス北東部のSunderlandで、1858年にWear Flint Glass Worksというガラス製造会社を設立しました。1869年にAngusが亡くなった後は、Greenerによってガラス製造は受け継がれ、1882年にGreenerが亡くなった後は、James Joblingによってさらに事業は継続されました。Greenerのガラス製造会社は19世紀後半における英国の代表的なガラスメーカーのひとつでした。
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