展示室3-1 ここではイギリスのトーマス・ウェッブ社のクィーンズ・バーミーズを紹介しています。

      

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(1) フェアリーライト、イギリス、"Clarke Fairy Pyramid" Thomas Webb's Burmese (1890s)、H9.5cm  (2) 同左 UV

  フェアリーライト(Fairy Light)とは、「妖精の明かり」という意味ですが、夜を通してろうそくがゆっくりと燃えるように 作られたもので、19世紀はじめから使われるようになりました。とくにこのデザインは通称「ピラミッド」と呼ばれ、イギ リス人のサミュエル・クラークが発明したものです。受け台のガラスの底に "S. CLARKE FAIRY PYRAMID"という文字が 刻まれています。本来はこれがガラス製の燭台の上に乗せられ、食卓の上に置かれたようです。

上部に孔のあいたドームの部分がウランガラスでできています。とくにこのウランガラスは「バーミーズ(Burmese)」と呼ば れ、イギリスのウエッブ社が1890年代に作ったものです。ウェッブ社は、正式には"Thomas Webb & Sons"といい、1840 年ころイギリス中央部のStourbridgeで設立され、数多くのウランガラスを作りましたが、とりわけバーミーズガラスで有名 です。

もともとバーミーズはアメリカのマウント・ワシントン社のフレデリック・シャーレーが1885年に発明したもので、金を少 量混ぜて作り出される「ビルマの夕焼け(Burmese sunset)」の空のような赤い色に由来しています。この赤の発色はガラスを製 造するときに"Glory Hole"と呼ばれる炉に入れ、再加熱することにより得られます。この特許を用いてウエッブ社では、1880 年代後半から20世紀初めまでバーミーズが作られました。

ウエッブ社のバーミーズは、当時のビクトリア女王がこれをとくに好んだことから"Queen's Burmese"と呼ばれています。 1920年代に復元が試みられましたが成功せず、その後ウエッブ社ではバーミーズは作られませんでした。

それからかなり長い時を経て、1970年にアメリカのフェントン社によりバーミーズが復活しました。フェントン社はビクト リア時代風のガラス工芸品を多く作っていますが、バーミーズの製法は公開されても実際に作るのは難しく、かなりの期間 実験を重ねて完成したと言われています。フェントン社のバーミーズは「アメリカのウランガラス」のページにあります。

    

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(3) 小花瓶、イギリス、"Queen's Burmese Ware Patented Thos Webb & Sons " (底に刻印)(1890s)、H11.7cm (4) 小花瓶、イギリス、 D8.5cm (5) 小花瓶ペア、イギリス、H11.7cm
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(6) 同上  UV (7) 同上  UV (8) 同上  UV
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(9) 小花瓶、イギリス、"Queen's Burmese Ware Patented Thos Webb & Sons " (1890s)、H8.5cm (10) 小花瓶、イギリス、H8.5cm (11) 小花瓶、イギリス、D7.3cm
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(12) 同上  UV (13) 同上  UV (14) 同上  UV
    
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(15) 小花瓶、イギリス、"Queen's Burmese
   Ware Patented Thos Webb & Sons "
   (1890s)、H8.5cm
(16) 小花瓶、イギリス、H8.5cm (17) 小花瓶、イギリス、D7.7cm
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(18) 同上、UV (19) 小花瓶、イギリス、Queen's Burmese Ware 、Thos Webb & Sons、1890s、H7.5cm (20) 同左、UV

  写真(3)から(20)は英国のトーマス・ウェッブ社のクィーンズ・バーミーズの小花瓶です。底に社名と登録刻 印があります。1890年代。写真(15)のバーミーズ小花瓶は写真(3)とよく似 ています。大きさもほとんど同じですが、 上部の花びらのようなひだの形が大小二重になっており、エナメル絵付けの木の葉と実の色調がや わらかいようです。
 写真(19)のバーミーズの小花瓶は、 高さ約7.5cmとかわいらしいのですが、柔らかく美しいかたちをしています。上端のひだは5枚で内側に折り込まれています。 底面に刻印はありませんがウェッブ社の典型的なバーミーズです。

    

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(21) フェアリーライトの明かり、英国、
  Thomas Webb社"Queen's Burmese"、
  1890年代、H9.5cm 

  写真(21)は、フェアリーライト(通称 "Clarke Fairy Pyramid")にろうそくを灯したところです。部屋の照明を暗くすると、ろうそくの炎の色がドーム状のバーミーズガラスに映り、全体的に赤味をおびた黄色の光となります。なんとなく暖かさを感じる明かり。今から百数十年前、まだ電灯がない時代に人々はこのようなフェアリーライトを卓上に飾り、ほのぼのとした明かりのなかで、ささやかな安らぎのひとときを楽しんだのでしょう。

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(22) バーミーズの小花瓶、英国Stevens &
   Williams社、H9.8 cm、1890年代 
(23) 同左 UV

  Stevens & Williams社は、英国Stourbridgeの有名なガラスメーカーで、その発祥は1776年に遡ると言われています。1853年からウランガラスの製造を始め、20世紀前半まで数々のウランガラスを作りましたが、写真のようなバーミーズガラスも作っています。英国のバーミーズといえば、Thomas Webb社のQueen's Burmeseが特に有名です。Stevens & Williams社はWebb社のバーミーズをまねて作ったようです。''The Big Book of Vaseline Glass''(B. Skelcher)には、これと同じものが、「質の良くないWebb's Queen's Burmeseの模造品」として紹介されています。確かに、写真の花瓶は上端の厚みやらせん状の溝の深さが場所によって不均一ですし、底のポンティル痕の研磨がやや雑です。しかしバーミーズ特有のピンクから黄色に変わる色合いはほどほどにいい感じがでています。

    

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(24) バーミーズの小花瓶、英国Thomas
   Webb社、H7.0 cm、1890年代 
(25) 同左 UV

  英国トーマスウエッブ社のQueen's Burmeseの小花瓶。上部の花びらのようなひだは6枚になっています。写真より実物はもっと濃いピンク色をしています。バーミーズ独特のピンク色は再加熱による発色ですが、これは比較的長く加熱されたのでしょう。下のほうまでかなりピンク色になっています。


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(26) バーミーズの小花瓶、英国Thomas
   Webb社、H8.0 cm、1890年代 
(27) 同左 UV

  写真(26)はバーミーズの小花瓶。メーカーの刻印はありませんが、英国トーマス・ウェッブ社の典型的なデザインです。1890年代半ばのものと思われます。高さは約8 cm、胴部の直径は約10 cmあります。ウェッブ社の他の小花瓶に比べてやや大きめのサイズになっています。ウェッブ社のバーミ―ズの小花瓶には、口の部分が花びらの形に広がったものを多くみかけますが、この花瓶は六角形になっていて、丸く膨らんだ胴部と直につながっています。バーミーズ特有の赤の発色は外側よりも内側のほうが強く出ています。底部はポンティル痕を円形に研磨してあります。胴部にはヘイゼルナッツの花と実が描かれています。ヘイゼルナッツのパターンは、西洋さんざし(Hawthorn)、赤い木の実(Red Berry)と並んで、ウェッブ社のバーミーズの代表的なパターンとなっています。

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(28) バーミーズのローズボウル、
   英国Thomas Webb社、H 5.8 cm、
   1890年代 

(29) 同左 UV

  写真(28)は英国Thomas Webb社製Queen's Burmeseのローズボールです。1890年代半ばのものと思われます。高さは約6 cm。底面はポンティル痕を円形に研磨してあります。メーカーの刻印はありません。上部の口の部分のひだは8つあります。この写真のように全体が丸い形で、上部の口の部分がすぼまっていて、ひだ付きの入れ物は、ローズボウル(Rose Bowl)と呼ばれます。ローズボウルは1880年ころ、ビクトリア時代から作られ始め、薔薇の花などのポプリを入れるものとして用いられました。

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