展示室3-6 ここではイタリアのムラノガラスを紹介しています。


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(1) 灰皿。イタリア、ムラノガラス。
  D11.7cm、H7.5cm、1950年代。室内の
  蛍光灯の下では黄色のウランガラス。
(2) 同左。屋外の光が差し込む所では、黄色の
  ウランガラスが緑色がかって見える。
(3) 同左  UV ブラックライトを当てるとウ
  ランガラスの部分が緑色に光る。

  写真(1)は、"Ruby Sommerso"と言われるイタリアの「ムラノ・ガラス」で、1950年 代に作られたものです。イタリアのベニスにあるムラノ島はベネチアンガラスで有名 です。ベネチアンガラスといえば精巧な装飾がほどこされた繊細なガラス工芸品を想 像されるでしょう。もちろんウランガラスでもこのようなベネチアンガラスはありま すが、通常「ムラノ・ガラス」というときには、この写真のように、黄色のウランガ ラスをベースに、赤や青などの色ガラスを組み合わせた、マッシブで斬新なデザイン のガラス製品のことを言うようです。

この灰皿は、黄色のウランガラスの内面が2、3mm厚みの赤いガラスで覆われ ています。赤いガラスはウランガラスではありません。上方からみると黄色いウラン ガラスの部分と赤いガラスの部分が分かれて見えるのですが、真横からみると屈折率 の関係で、赤色と黄色が重なってオレンジ色に見えます。"Sommerso"というイタリア 語には「水中に沈んだ」という意味があるようです。黄色のウランガラスの大きなか たまりのなかに、色ガラスの部分が沈められたように見えることから名付けられたの ではないかと思われます。


    

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(4) 灰皿、イタリア、ムラノガラス、1950年代
  、高さ約4.5cm。 
(5) 同左 UV。

  写真(4)は、”Bullicante”と呼ばれるムラノガラスの灰皿です。イタリアのベネチアのムラノ島で1950年代に作られたもの。高さは約4.5 cm、辺の長さはおよそ10 cm の丸っぽい四角い形をしています。製作者はJaffe Roseといわれています。このガラスもSommersoの技法を用いて作られており、ベースとなる黄色系のウランガラスの底の部分に、青色のガラスが沈められたように見えます。ガラス自体がかなり分厚いので、自然光のもとでもウランガラス独特の緑色蛍光を発するのがよくわかります。

”Bullicante”とは、規則的に並んだ気泡が内部に封入されたガラスのことをいいます。ガラスの中に不規則にたくさんの気泡を混ぜるには、ガラスが溶融するときに発泡する物質をガラスの原料に混ぜる方法がとられます。これに対して規則的に並んだ気泡をガラスの内部に作り出すのは、尖った釘状のもの(スパイク)をいくつかの列状に並べた道具を溶けたガラスに突き刺し、ガラスの内部に気泡を押し込むのだそうです。ベネチアのムラノ島ではこの技法を用いたムラノガラスが1930年代から数多く作られました。


    

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